日本版ベターチキンへの移行を促す

欧米を中心にヨーロッパチキンコミットメント(英国ではベターチキンコミットメント)というアニマルウェルフェアに配慮した肉用鶏の基準が広まりつつあります。

ヨーロッパチキンコミットメント(ECC)

  The European Chicken Commitment
>包括的基準 国に関係なく、 EU動物福祉法と規則を遵守すること
品種 より福祉的な品種の選択(Hubbard JA757, 787, 957, or 987, Rambler Ranger, Ranger Classic, and Ranger Gold, その他RSPCAの肉用鶏認証プロトコルに適合した種)
密度 より広いスペース(最大飼育密度:30kg / m2 )
明るさ 自然光を含む少なくとも50ルクスの光
エンリッチメント 1,000羽の鳥につき最低2メートルの使用可能なとまり木スペース、および2種類のつつく素材
と畜

人道的な虐殺(不活性ガスや多相システムを使用した制御されたガススタニング、または生きた状態で逆さ吊りをしない有効な電気スタニング)

監査 第三者による監査
報告 基準の遵守状況の年次報告の公開

科学的裏付けとともに動物福祉団体がベターな肉用鶏の飼育基準を決めたものであり、すでに295の企業が2026年までにこの基準をクリアした鶏肉に切り替えることを宣言しています。その中には複数の国でのケンタッキーフライドチキンや、北米のバーガーキングなども含まれています。

日本でも世界基準に合わせた日本版ベターチキンを推進しています。欧米と足並みを合わせることを目標としますが、日本で取り組みが進んでいないガススタニングなどの工程、第三者監査システムが現状ないことなどを考慮し、2グレードにわけ、遵守を求めています。

日本版ベターチキン

  日本版ベターチキン基準
グレード1
日本版ベターチキン基準グレード2
包括的基準 国に関係なく、 EU動物福祉法と規則を遵守すること
OIEの肉用鶏・輸送・屠殺の福祉規約を遵守すること
品種 RSPCAの肉用鶏認証プロトコルに適合した種
日本の地鶏
RSPCAの肉用鶏認証プロトコルに適合した種
日本の地鶏
密度 より広いスペース(最大飼育密度:30kg / m2 )
より広いスペース(最大飼育密度:30kg / m2 )
明るさ 自然光を含む少なくとも50ルクスの光
自然光を含む少なくとも50ルクスの光、および6時間以上の暗い時間を設ける
エンリッチメント 1,000羽の鳥につき最低2メートルの使用可能なとまり木スペース、および2種類のつつく素材
1,000羽の鳥につき最低2メートルの使用可能なとまり木スペース、および2種類のつつく素材
と畜 人道的な虐殺(不活性ガスや多相システムを使用した制御されたガススタニング、または生きた状態で逆さ吊りをしない有効な電気スタニング)
少なくともネックカット前にスタニングを行うこと
監査 第三者による監査
自己チェックを行い結果を公表
報告 基準の遵守状況の年次報告の公開
基準の遵守状況の年次報告の公開

 

ベターチキン解説:包括的な基準

ヨーロッパチキンコミットメント及び日本版ベターチキングレード1ではEUの福祉に関するディレクティブの遵守が求められています。

日本版ベターチキングレード2では世界動物保健機(OIE)の動物福祉規約(肉用鶏・輸送・と畜)の遵守が求められています。

ベターチキン解説:品種

日本版ベターチキングレードでは、ヨーロッパチキンコミットメントで認められている品種、地鶏、及びそれに準じる品種を求めています。

ヨーロッパチキンコミットメントで認められている品種以外のものとして、日本在来種をベースとした品種であり、一日の増体が30gを超えないことが理想的であるが、ベターチキンでは一日の増体が最大74g(雄)を超えない品種であることが求められています。74gはヨーロッパチキンコミットメントで許容されている品種の一日の最大増体量(平均増体量ではない)です。しかし、この体重増加量では図りきれず、世界のベターチキンコミットメントに準じてRSPCAの肉用鶏認証プロトコルに適合した種が求められるようになりました。

品種改変が進みすぎており、動物の健康への弊害が大きくでています。また消費者も過剰な品種改変の実態を知ると衝撃を受けます。重要な項目であると考えられます。

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ベターチキン解説:密度

ベターチキンでは1㎡あたり30kg以下とされています。

例:出荷体重が3kgの場合、10羽/1㎡
例:出荷体重が3.5kgの場合、8.5羽/1㎡

以下のような研究結果があり、ゆとりのある飼育密度を保つことは重要です。

  • 鶏は1㎡あたり5.8羽の密度になると嫌悪感を感じ始める(Bokkers et al 2011)。
  • 28.0 kg/㎡の飼育と比較すると37.0 kg/㎡の飼育は、累積体重増加と飼料摂取量が下がり、ストレスが増加したことが熱生理学的応答と血液検査によって明らかにされた。(Alaeldein M. Abudabos et al 2012)
  • 飼育密度が高いほど、趾蹠皮膚炎やホックバーンが増加した。飼育密度が低いほど、脳の障害の有病率は低かった。(Poul Sørensen et al 2000)

https://www.researchgate.net/publication/12442744_Effects_of_Age_and_Stocking_Density_on_Leg_Weakness_in_Broiler_Chickens https://www.tandfonline.com/doi/full/10.4081/ijas.2013.e11

ベターチキン解説:明るさ

ベターチキンでは自然光が必要とされています。またEUディレクティブにより6時間以上の暗期が必要とされ、OIE規約でも24時間の周期と暗期が必要とされます。

暗期については日本の畜産技術協会も暗期の設定を推奨するチラシを作成しています。

  • 自然光があると横たわる(座り込んでいる)時間が減少する(76.7 vs 83.5%)、歩く時間が増える(52.4 vs 37.7 events/10min)、食べる時間が増える(15.8 vs 10.0 events/10min)、歩く能力も1.3倍向上するなどの健康面への影響が有意にある。
  • 一定期間の暗期を設けることは連続照明(暗期のない照明プログラム)よりも生産性が向上し、ウェルフェアレベルも上昇する。畜産技術協会 技術レター ブロイラー 「暗期」 

ベターチキン解説:エンリッチメント

エンリッチメントとは、動物の飼育環境に生物学的に関連する刺激を加えて自然な行動の発現を促すことです。足の問題の発生の減少、仲間同士のつつきの減少、骨の強化など様々な利点があります。以下のエンリッチメントが求められています。

以下2点が必須要件となっています。

  1. とまり木:1,000羽の鳥につき最低2メートル
  2. 2種類以上のつつく素材(わらの塊、吊るしたわらの束やとうもろこし、突くため石、ボール)