EU議会のアニマルウェルフェア・ブロイラー・抗生物質使用に関する決議

EU議会は2018年10月、アニマルウェルフェア、抗菌物質の使用、及び商業用ブロイラー畜産が環境に与える影響等についての決議を行いました。内容を見ると、現在、EU議会として肉用鶏への懸念が強いことがわかります。実際、構成物資の多剤耐性菌(AMR)は鶏肉、ついで豚肉から多く検出されます。日本では鶏肉に関するアニマルウェルフェアが全く進んでおらず、飼育密度もEU規制の1.7倍となっており、鶏たちは超過密状態で飼育されており、薬剤耐性菌検出率も高いものになっています。

http://www.europarl.europa.eu/doceo/document/RC-8-2018-0484_EN.html

2018年10月25日  ストラースブール http://www.europarl.europa.eu/sides/getDoc.do?type=TA&reference=P8-TA-2018-0429&language=EN&ring=P8-RC-2018-0484

欧州議会における、アニマルウェルフェア、抗菌物質の使用、及び商業用ブロイラー畜産が環境に与える影響等についての決議

(2018年10月25日付け)(2018/2858(RSP))

 

 欧州議会において、

- 食肉生産用に飼育されている鶏の保護を目的とした最低基準規則(ブロイラー指令)を規定した欧州理事会指令2007/43/EC(2007年6月28日付け)を考慮するものとする。

- 2016年から2020年までの新アニマルウェルフェア戦略に関する決議(2015年11月26日付け)を考慮するものとする。

- 「2017年度 EUにおける薬剤耐性に対する健康アクションプラン」(the 2017 EU One Health Action Plan against Antimicrobial Resistance)を考慮するものとする。

- 「動物の保護と福祉のためのヨーロッパ連合戦略2012-2015(COM(2012)0006)」に関する欧州委員会通知」(the European Union Strategy for the Protection and Welfare of Animals)(2012年1月19日付け)を考慮するものとする。

- 欧州理事会指令2007/43/ECの適用と、食肉生産用に飼育されている鶏の福祉に与えるその影響、及び福祉指標の改善(COM(2018)0181)に関する、欧州委員会から欧州議会と欧州理事会への報告(2018年4月13日付け)を考慮するものとする。

- 欧州理事会指令2007/43/ECの適用、及び福祉指標の改善に関する欧州委員会による研究(2017年11月21日付け)を考慮するものとする。

- 「獣医学薬物製品規則」(the Veterinary Medicinal Products Regulation)に関する同意(2018年6月5日付け)を考慮するものとする。

- 伝染性のある動物疾病と、動物保健の分野における特定の法律(動物保健法(Animal Health Law))の修正と破棄に関する欧州議会と欧州理事会のEU規則2016/429(2016年3月9日付け)を考慮するものとする。

- 食品と飼料を定めた法律、及び動物保健、福祉、植物保健、作物保護製品[殺虫剤など]、等を定めた規則の適用を保証すべく行われる、公的機関による管理とその他の活動に関する、欧州議会と欧州理事会のEU規則2017/625(2017年3月15日付け)を考慮するものとする。

- 「畜産目的で飼育される動物の保護のためのヨーロッパ条約(the European Convention for the Protection of Animals kept for Farming Purposes)」、及び同論題の欧州理事会指令98/58/EC(1998年7月20日付け)を考慮するものとする。

- 欧州議会と欧州理事会の指令2010/75/EUの下で、豚あるいは家禽の集約的飼育のための、利用可能な最善手法(best available techniques(BAT))の決定を定めている、「欧州委員会履行決定機関」(Commission Implementing Decision(EU))2017/302(2017年2月15日付け)を考慮するものとする。

- 手続き規則第128条第5項及び第123条第4項を考慮するものとする。

 

A. EUは、ブロイラー鶏の世界の主要生産者で、およそ70億羽を食料目的で屠殺した。また、ヨーロッパの「農場からフォークまで」の原則に従って生産を行っている家禽部門では、2万3千の大規模ブロイラー農場において、25万人以上が雇用されている。

B. 指令2007/43/EC(ブロイラー指令)では、食肉生産用に飼育されている鶏の保護のための最低基準が規定されている。欧州委員会、EU構成国、及び生産者が、これら規則を遵守し、この分野における定期的監査を実施していることは重要である。

C. 理事会指令2007/43/ECの適用に関する欧州委員会の研究(2017年11月21日付け)によると、34%のブロイラー鶏が、一般的な規則にしたがって飼育密度33kg/㎡で飼育されており、40%が34~39kg/㎡、そして26%が当該指令で許可されている最も高い密度(42kg/㎡まで)で飼育されている。

D. ブロイラー指令の施行は一律でなく、欧州委員会の、最近の履行に関する報告が示すとおり、EU構成国間で一貫性を欠いている。

E. 抗菌性獣医学薬品、特に成長促進剤や高度感染予防剤、及び病気予防剤の使用過多は、世界規模での薬剤耐性菌拡大の主要な原因となっている。高密度の飼育環境または高温ストレスによる貧弱な福祉状況は免疫欠損を引き起こし、ブロイラー鶏をさらに罹患しやすくしている。

F. ヨーロッパ食品安全機関(the European Food Safety Authority (EFSA))やヨーロッパ疾病予防管理センター(the European Centre for Disease Prevention and Control (ECDC))の報告にあるとおり、ブロイラー農場やブロイラー肉にみられる、多剤耐性を持った人畜共通感染型のカンピロバクター菌やサルモネラ菌の存在は、公衆衛生上の大きな脅威である。

G. アニマルウェルフェアに関する規則は、最新の科学に基づいて更新される必要があり、長期における畜産業界の競争力も当然、留意されなければならない。十分な福祉を活用した畜産方法では、動物の健康が改善され、それにより、抗菌物質投与の必要性削減につながると同時に、高品質の生産を保つことが可能となる。

H. ブロイラーの福祉とストレスに対する抵抗力についての、遺伝母数の影響に関する、2010年のEFSAの科学的見地に基づく提言によると、ブロイラー鶏の成長率に基づいた遺伝子選択では、鶏の健康と福祉を損なう恐れがある、としている。

I. EU市民は、アニマルウェルフェアに強い関心を持っており、消費者として、購買判断のためにより詳細な情報を望んでいる。

J. アニマルウェルフェアに関する、最新の特別ユーロバロメーター(special Eurobarometer)によると、50%を超えるEU市民が、動物由来製品を購入する際、その生産方法についての情報を求めており、アニマルウェルフェアに配慮した製品にもっと支払ってもよい、と答えている。また、80%のEU市民が、EUにおいて畜産動物の福祉改善されることを望んでいる。

K. EU域内で消費される鶏の胸肉のうち25%は、アニマルウェルフェアに厳格でない第3国から輸入されている。輸入鶏肉の大部分は、外食産業や加工食品において使用されており、これらについては、生産地情報やラベル表示は義務付けられていない。

L. 第3国からの輸入は、タイ、ブラジル、ウクライナでその90%を占める。これら輸入肉は、欧州委員会のDG SANTE(保健衛生・食の安全総局 Directore-General for Health and Food Safety)の監査の対象になりがちであり、生産過程、及びEU法の遵守において、著しい欠陥が指摘されている。安い鶏肉の輸入が経済、社会、及び環境に与える影響や、第3国の生産であっても加工はEU内で行われた、という誤解を与えやすいラベル表示に、EU畜産農家やNGOは懸念を表明している。

1. 指令2007/43/ECの適用と、その適用が食肉生産のために飼育されている鶏の福祉に及ぼす影響についての、欧州委員会の報告結果を認めるものとする。これによると、わずか2/3のEU構成国のみが、適切に指令を履行していることが判明した。また、報告書にあるとおり、多くの施設において、一般的な規則である、33kg/㎡よりも高い密度での飼育方法が優勢であることに対し、ここに懸念を表明する。

2. ブロイラー畜産農家で典型的に見つかる、カンピロバクター菌、サルモネラ菌、及び大腸菌などの、多剤耐性を持った人畜共通感染症の増加の懸念をここに表明する。

3. 様々なEU構成国において、ブロイラー指令の履行に向けて、畜産農家自身によるブロイラーの福祉についての取り組みが、すでに行われていることを、ここに認めるものである。特筆すべきは、自発的な計画を持って参加している畜産農家の存在である。

4. 指令2007/43/ECの目標を達成可能にする基準と安全性の確立という観点から、指令の履行と完全な施行の両立を、欧州委員会とEU構成国に求めるものとする。

5. 規則を遵守していない者が、遵守している者より安価な生産を行うことで、不公正な競争が不公平な市場を生み出すことを、ここに強調するものとする。

6. ブロイラー鶏と種鳥のために、安定的かつ測定可能な、調和の取れたアニマルウェルフェアの指標を確実のものとすることを、欧州委員会に求めるものとする。これには、孵化場のための、利用可能な最善の運営方法に向けたガイダンスも含まれる。

7. 最善の運営方法を促進することで、鶏舎の火災防止に努めるよう、欧州委員会とEU構成国に求めるものとする。また、指令2007/43/ECにあるとおり、畜産農場主のために、適切で十分なトレーニングコースの設置準備をつつがなく行うことを、EU構成国に求めるものとする。

8. 人畜共通感染の可能性のある、多剤耐性カンピロバクター菌、サルモネラ菌、及び大腸菌の流行と危険要因についての提言を、EFSAに依頼するものとする。

9. 「獣医学薬物製品規則」(the Veterinary Medicinal Products Regulation)が2018年6月5日に同意に至ったことをここに歓迎する。高度感染予防、及び病気予防を目的とした抗生物質の使用制限を規定している条項をここに歓迎する。予防措置に関するこの規則の方針と、EMA(ヨーロッパ医薬品庁the European Medicines Agency)/EFSAの合同による科学的見地に基づく提言を再確認するものとする。この提言では、以下を求めている。より健康的でゆっくりと成長する種鳥の使用、罹患率を増加させない飼育密度、より少ない数のグループごとの飼育、罹患した動物の隔離(EU規則第10条2016/429)、及び現行の福祉法の履行、等である。当該規則は、薬剤耐性(AMR)に対する早急な対策を促進させ、獣医薬学の分野における技術革新を刺激するであろうと信じるに足るものである。EUにおける家禽畜産業界と各国政府は、家禽畜産農場の近代化をとおして、抗生物質の使用を減らすためのイニシャティブを取っていると考えるものである。

10. 畜産技術の改善により、家禽の生活の質は高まり、抗菌物質使用の必要性も減少することを、ここに強調するものである。改善の例として、自然光の取り込み、清潔な空気と飼育スペースの確保、アンモニアを減らすこと、等が挙げられる。「動物保健に関する戦略(the Animal Health Strategy)」において発表された声明、及び「予防は治療に勝る」という言葉どおりの大変な発展を、欧州委員会に再認識して頂くものとする。

11. アニマルウェルフェアはそれ自体が、予防手段としての役割を持つことを、ここに強調するものとする。動物が罹患するリスクを減少させることで、抗菌物質の使用を減らし、高い生産実績がをもたらされやすくなるのである。また、抗菌物質の不適切な使用は、畜産動物としての価値を失わせ、結果的に人間の健康をも危険にさらすこともここに指摘するものである。

12. AMR(薬剤耐性)の研究と最善の運営方を強化すること、及び疾病調査や管理等の予防的手段が、効果的にEU構成国によって実施されることを、欧州委員会に要求するものとする。

13. ブロイラー鶏の代替飼育システム、ならびに伝統種かブロイラー種か、より良い福祉を実現可能な方に、飼育システムを替えることを周知する政策の促進について、欧州委員会に要求するものとする。

14. ブロイラー鶏がより良い福祉を享受可能になる様、競争力があり、かつ持続可能な家禽肉生産と繁殖をサポートするロードマップの作成を、欧州委員会に要求するものとする。

15. EUの定めるアニマルウェルフェア、食品安全、及び環境に関する規則の遵守の徹底のため、国境における、第3国からの輸入家禽肉の管理の強化を欧州委員会に要求するものとする。

16. 環境や社会問題、食品安全、及びアニマルウェルフェアの基準が低い国々からの鶏肉の輸入が増加していることを、ここに強調するものとする。EUの生産者のため、公正かつ公平な市場を保障すべく、輸入鶏肉、肉製品、及び調理済み製品が、環境や社会問題、食品安全、及びアニマルウェルフェアに関するEUの基準に合わせて生産されていることが保証されるよう、欧州委員会に要求するものとする。

17. 消費者が十分な情報を得て買い物ができる様、小売、ケータリング、外食産業で加工された輸入肉製品の、生産地表示義務化に関する法案の提出を、欧州委員会に要求するものとする。

18. 透明性を高め、畜産物生産品のアニマルウェルフェアが、消費者に分かりやすいものとなるよう、すでにある鶏卵の方法と同様なブロイラー鶏の識別生産方法の確立を、欧州委員会に要求するものとする。

19. 当決議を欧州委員会、及びEU構成国に提出することを議長に指示するものとする。

 

※太字はアニマルウェルフェアアジアによる

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