肉用鶏の敷料管理:欧米での改善策

敷料は鶏が一生触れている物であり、その管理は非常に重要である。
一番の問題は湿った敷料で、接触性皮膚炎、胸部水疱、寄生虫の侵入の原因となっている。

ヨーロッパでの最低基準

EUのブロイラー飼育の最低基準となる規制では2007年の時点で既に以下の要求事項がある。*1

3.全ての鶏は、表面が乾燥して砕けやすくなっている敷料へ常時アクセスできるものとする。
10.鶏舎内の全ての鶏を出荷した後は、全ての敷料は取り除かれ、清潔な敷料が提供されなければならない。

https://arcj.org/download/eu-broiler-directive/

ブロイラーに関する動物の健康と福祉について、EUの科学委員会による報告書には敷料管理の適切な方法について詳しく書かれている。*2

  • 鶏の密度が 30 kg/m2 以上過密になると敷料の質が悪化し接触皮膚炎が増える。
  • 最適な湿度は始めの4週間は20~50%で最後の2~3週間は10~30%
    • 水分を多く吸収できる敷料を使用した方が胸部水疱の発生率が減る。
    • 敷料の湿度を抑える為に水が漏れない給水設備を。適切な高さの受け皿が必要。
    • 湿気を除くために充分な換気が必要。
    • 敷料が湿る下痢や粘々の糞を防ぐためにバランスの良い餌が必要。
  • 敷料のアンモニア濃度が20ppm以下の方が腹水症の発生率が大分減る。
  • 柔らかい素材の方が接触皮膚炎が防げる。
  • 敷料の深さは5㎝以内の方が趾蹠皮膚炎を防げる。

敷料を手の甲で触れた際に湿りを感じる場合、30%以上の水分を含む可能性があり、尿酸を急速にアンモニアに変換し、ハエの幼虫やコクシジウム類の成長を促し、胸部水疱を促進する *3。

特に給水設備の周りは敷料が固まりやすいため特別な注意を払う必要がある。
固まった箇所は耕すか、取り除き新しい敷料を足す必要がある。
敷料を耕す場合はアンモニア濃度の急激な上昇がみられるため、窓を開けて行うか、換気扇でアンモニアを急速に取り除く必要がある。*3

敷料が糞尿などにより固まると、アンモニア濃度が上昇し、鶏の健康、福祉、成長、肉質および労働者の健康にも悪影響がある。*4
業者はアンモニアに慣れ、自分の鼻や目では濃度を少なく見積もる傾向があるので要注意。*4

アンモニアは、糞内の未消化のタンパク質と尿酸の分解によって形成されるので、飼料の粗たんぱく質を1%減らすごとにアンモニア排出量が10〜22%減るという結果がある*5。

アメリカで続く敷料の再利用

米国では敷料の節約のため、年に一度しか完全に交換しない養鶏場が多いが、何年も再利用し続ける農家も増えている。廃棄する敷料による環境への影響も再利用されている理由の一つだ。*4
感染症があった場合はもちろん完全に交換するべきだ。

再利用の方法は主に2つ:

  1. 発酵させて再利用(windrowing):鶏舎の中で敷料を列に盛って発酵させて殺菌。発酵させた敷料は雛を入れる4~5日前に広げ、乾燥させる。*6
  2. 部分的廃棄:汚れた分を除いて残りを再利用。濡れたり固まった部分を除き、特に始めに雛を置く場所には新しい敷料を足す。*7
「Broiler windrow」の画像検索結果"
敷料の発酵 (windrowing)
写真:Sania Shetty  https://agrilifeextension.tamu.edu/library/poultry/in-house-windrow-composting-of-poultry-litter/

世界中で養鶏を行っているAviagen社は敷料の適切な再利用は難しいため推奨していない。どうしても必要な場合は湿度や病原菌を注意深く検出できる方法を設けてあるべきだと注意している。 *8

*1 EUディレクティブ:ブロイラー規制
*2 The Welfare of Chickens Kept for Meat Production (Broilers). Report of the Scientific Committee on Animal Health and Animal Welfare, Adopted 21 March 2000.
*3 Musa et al. Poultry Litter Selection, Management and Utilization in the Tropics, Poultry Science, Milad Manafi, IntechOpen, DOI: 10.5772/65036. 15 February 2017.
*4 Poultry Litter Management. Publication 2738 (POD-09-18) by Tom Tabler, PhD, Extension Professor, Poultry Science, and Jessica Wells, Extension Instructor, Poultry Science. Mississippi State University.
*5 Meda et al. Influence of rearing and manure management practices on ammonia and greenhouse gas emissions from poultry houses. World Poultry Science Journal, 67: 441–445, 2011.
*6 Managing Litter Moisture in Broiler Houses with Built-up Litter. Banrie, 4 February 2013.
*7 Broiler Production and Management. Chris Harris, 24 April 2004.
*8 Ross Broiler Management Handbook. 2018 Aviagen.