OIEは獣医師が集まり科学的根拠を持って、また世界のレベルに合わせながら国際基準を作っており、畜産後進国である日本にとっては学ぶべきことが多数あります。
アニマルライツセンターは最低限このOIE動物福祉規約を守って欲しいと考えており、日本語訳を行い公開しています。
https://www.oie.int/index.php?id=169&L=0&htmfile=chapitre_aw_broiler_chicken.htm
【アニマルライツセンター訳】2016年版
第7.10.章 アニマルウェルフェアと肉用鶏生産方式
第7.10.1.条 定義
本章の目的のため、以下を定義する。
肉用鶏:
商用の肉を生産するために飼養されているGallus gallus 種の鳥。村で飼育されている家きんまたは裏庭養鶏は含まれない。
収穫:
屠畜場/食鳥処理場に輸送するため農場において鳥を捕まえて積載すること。
第7.10.2.条 適用範囲
以下の推奨事項は、商業目的の肉用鶏生産方式において、初生雛が農場に到着するところから肉用鶏を収穫するまでの生産期間を対象とする。このような生産方式には、生産規模に関わらず、鳥の閉鎖環境での飼育、防疫措置の適用、鳥肉製品の貿易を含む。以下の推奨事項は、ケージ、すのこの床、寝ワラまたは泥土、屋内または屋外で飼養されている肉用鶏を対象とする。
肉用鶏の生産方式は以下を含む:
1.完全な舎飼い生産方式
環境管理の有無を問わず、肉用鶏は、完全に鶏舎に収容されている。
2.部分的な舎飼い生産方式
肉用鶏は鶏舎で飼育されているが、屋外の限られた場所への出入りが可能である。
3.完全な屋外生産方式
肉用鶏は生産期間中全く鶏舎内に収容されておらず、屋外の限られた場所に収容さている。
輸送から食鳥処理場に至るまでの肉用鶏の福祉については、第7.2、7.3 及び7.4 章を併読すること。
第7.10.3.条 肉用鶏の福祉の基準又は福祉の状態を測ることができるもの
肉用鶏の福祉は、結果から測り得る所見で評価されるものとする。また、提供されるリソースとシステムの設計についても考慮する必要がある。以下の結果から(福祉の状態を)測り得る所見、特に動物の状態から測りうる所見は、アニマルウエルフェア(以下、動物福祉)の有用な指標となる。肉用鶏が管理されている様々な状況に応じて、対象となる鳥の系統も考慮した上で、これらの指標及び適切な閾値を適用するものとする。
歩様、死亡率そして罹患率のように農場で計測できる基準と、食鳥処理場で計測するのが最適である基準がある。例えば、鶏群は処理時に、打撲、翼の骨折及び損傷の有無を評価することができる。これら損傷の古さは原因を特定する助けとなる。背中の引っかき傷、接触性皮膚炎及び胸ダコも食鳥処理場で容易に見つけることができる。腹水、足の奇形、脱水や病状のような他の状態も処理時に評価できる。商業用肉用鶏生産の福祉の状態を測り得る値は、国、産業界あるいは地域の適切な標準値を参照して決定することを推奨する。
以下の結果に基づく基準及び結果から測り得る所見は肉用鶏の福祉の有用な指標である。
1.死亡率、淘汰及び罹患率
一日当たり、週当たりそして累積の死亡率、淘汰及び罹患率は想定される範囲内にあるべきものとする。これら比率の突発的な増加は、動物福祉上の問題を反映している可能性がある。
2.歩様
肉用鶏は様々な感染性及び非感染性の筋骨格系の疾患にかかりやすい。これらの疾患は、跛行及び歩行異常を起こす可能性がある。跛行あるいは歩行異常を示す肉用鶏は食べ物や飲み水に近づくことが困難である可能性があり、他の肉用鶏によって踏みつけられたり、苦痛を経験したりする可能性がある。筋骨格の問題には、遺伝、栄養、衛生、照明、敷料の質、その他環境や管理要因を含む多くの原因がある。歩様を点数化する方法は複数ある。
3.接触性皮膚炎
接触性皮膚炎は、皮膚表面が長期にわたり湿った敷料やその他湿った床表面に、接触することによって起こる。その状態は、趾蹠底部の皮膚、膝節の背面、時として胸部において糜爛と線維化へと発展する皮膚の黒化として認められる。趾蹠と膝節の病変は深刻な場合、歩行困難になったり、二次感染を起こしうる。処理場で接触性皮膚炎を点数化する方法が開発、認証されている。
4.羽毛の状態
肉用鶏の羽根の状態を評価することは、福祉の観点から有益な情報となる。羽根の汚れは鳥の接触性皮膚炎と歩行異常に相関し、または環境及び生産方式と関係しいている可能性がある。羽根の汚れは農場における検査の一環として、収穫時または羽をむしり取る前に評価することができる。このための点数化の方法が開発されている。
5.疾病、代謝疾患及び寄生虫感染の発生率
原因にかかわらず、体調不良は福祉上の懸念であり、粗悪な環境又は飼養管理によって悪化する可能性がある。
6.行動
a) 恐れを示す行動
恐怖を感じた肉用鶏は人を避ける。この肉用鶏群の行動は、飼養者が肉用鶏と接触しながらゆっくり動く時ではなく、仕事をしながら急いで鶏舎の中を歩いて通り過ぎる時に見られる。(例えば、突然の大きな騒音に対する)恐怖は、肉用鶏が互いに上に乗る状態、さらには、窒息状態を引き起こし得る。恐怖を感じた肉用鶏の生産性は低くなるかもしれない。恐怖の度合いを評価する方法が開発され、認証されている。
b) 空間的分布
鳥の空間的な分布の変化(例 群がること)は、温度面の不快感、あるいは、敷き料が濡れているところがあったり、採光、食物あるいは水の給与が不均等であったりする状態を示している可能性がある。
c) 浅速呼吸と羽翼を広げる行動
過度に喘いだり翼を広げる行動は、暑熱ストレスまたはアンモニア濃度が高いなどの空気の質の悪さを示している。
d) 砂浴び
砂浴びは肉用鶏を含む多くの鳥達が行う複雑な身体維持管理行動の一つである。砂浴びの間、肉用鶏は敷き料のような緩い物質で羽根を梳く。砂浴びは羽根を良い状態に保ち、結果として体温を保ち、皮膚を怪我から守るのに役立つ。群れにおける砂浴び行動が減る場合には、敷き料や地面が湿っているあるいは固まっているなど、敷き料や飼育場所に問題があることを示している可能性がある。
e) 採餌、飲水及び啄(ついば)み
採餌や飲水行動の減少は、不適切な給餌や給水空間、栄養の偏り、水質の不良、あるいは飼料の汚染を含む、管理上の問題があることを示唆しうる。採餌、飲水行動はしばしば肉用鶏が病気の時に低下し、また、採餌行動は、暑熱ストレスを感じている間も減少し、寒冷ストレスを感じている間に増加するかもしれない。啄みは、典型的なものは、歩いて敷き料をつついたり剥がしたりすることによって食べ物を探す活動であり、啄み行動の減少は、敷き料の質に問題があるか、鳥の行動を減少させる状況にあることを示唆しうる。
f) 羽根つつきと共食い
羽根つつきは、深刻な羽根の消失を招き、共食いにつながることがある。共食いは他の鳥の生肉をむしり取ることで、深刻な怪我を引き起こしたりする。これらの異常行動は、様々な原因で起こる。
7.水と餌の消費
日々の水の消費量を監視することは、気温、湿度、飼料の消費やその他の関連事項を勘案した上で、疾病とその他の福祉の状態を示す有用なツールとなる。水の供給に問題があると、敷き料が湿ったり、下痢、皮膚炎や脱水を引き起こす可能性がある。餌の消費量に変化がある場合は、不適切な飼料、疾病又はその他の福祉の問題があることを示し得る。
8.(生産)成績
a) 成長率―一群の平均的肉用鶏の一日当たりの平均増体量(gr)を示す指標
b) 飼料要求率―肉用鶏が1kg 増体するために必要とする飼料の量として表現される、収穫時の合計体重に対する群で消費された飼料の量を測る指標。予想以上の高い値は、福祉の問題を示唆するかもしれない。
c) 生存率―生産期間の最後に生存していた肉用鶏の割合を示す指標;より一般的には、反対の指標である死亡率として計測される。
9.損傷率
これら損傷の割合は生産又は収穫時の鶏群における福祉の問題の指標となり得る。損傷は他の肉用鶏によるもの(引っかき、羽根の消失あるいは羽根つつきや共食いによる外傷)及び皮膚病変のような環境条件によるもの、及び捕獲のように人が介在することによるものを含む。捕獲中、最も頻繁に見られる損傷は、あざ、脚の骨折、股関節脱臼及び翼の損傷である。
10.目の状態
結膜炎は塵埃やアンモニアのような刺激物があることを示している可能性がある。アンモニア濃度が高いと、角膜の炎症も引き起こし、遂には失明する可能性がある。目の発達異常は、照度の不足と関連しうる。
11.鶏鳴
鶏鳴は、気分の良し悪し両方の感情を示唆し得る。熟練した動物取扱者は鶏群の鳴き声から聞き分けることができる。
第7.10.4.条 推奨事項
- 防疫措置と動物衛生
a) 防疫措置と疾病予防
防疫措置の計画は、可能な限り最良の群れの健康状態と、それぞれの肉用鶏の疫学集団に特有の現在の疾病リスク(地域性、外来性あるいは越境性)に応じて、これに相当する陸生動物コードの推奨事項に従って、設計及び実行するものとする。
これらの計画は疾病及び病原体の主な伝播経路を管理するものとする。すなわち、
i) 他の家きん、飼育された及び野生の動物及び人間からの直接感染
ii) 器具、施設および運搬資材などの媒介物
iii) ベクター(例えば、節足動物及び小型げっ歯類)
iv) エアロゾル
v) 水の供給
vi) 飼料
(結果から)福祉の状態を測り得る所見:疾病、代謝疾患及び寄生虫感染の発生率、死亡率、成績
b) 動物衛生管理、予防的投薬及び獣医学的治療
肉用鶏の世話に責任を有する者は、飼料及び水の摂取量の変化、増量の減少、行動の変化、羽、糞あるいは他の外観的異常といった体調不良あるいは苦悩の徴候に気付くものとする。
責任者は、病気、体調不良あるいは苦悩の原因を特定あるいは改善できない、あるいは通報対象の疾病の存在を疑う場合、獣医師あるいは他の資格を有する助言者から助言を求めるものとする。獣医学的治療は獣医師によって処方されるものとする。
獣医サービスによって適切に設定されたプログラムに準拠した、疾病の予防及び治療に関する効果的なプログラムを有するものとする。
ワクチン及び治療は、獣医師またはその他の専門家の助言に従い、その手順に習熟した者によって、肉用鶏の福祉を考慮しながら、実施されるものとする。
病気あるいは怪我をした肉用鶏はできるだけ速やかに安楽死させるものとする。同様に、診断目的の肉用鶏の殺処分も、第7.6 章に基づき安楽死させるものとする。
福祉の状態を測り得る所見:疾病、代謝疾患及び寄生虫感染の発生率、死亡率、成績、歩様
2.環境及び管理
a) 温度環境
肉用鶏のための温度環境は発達段階に適していなければならず、極端な暑熱、湿度及び寒さは避けなければならないものとする。成育期には、変化する気温と相対湿度において肉用鶏の快適な範囲を決めるためには、熱指標(heat index)が活用できる。
環境条件がこの快適な範囲を超えて推移する場合には、肉用鶏に対する悪影響を軽減するための対策を講じるものとする。これら対策には、風力、熱の供給、蒸発冷却の調整や、飼養密度の低減が含まれる。
温度環境の管理装置は、福祉上の問題が生じる前に故障が発見できるよう、頻繁に点検するものとする。
福祉の状態を測り得る所見:行動、致死率、接触性皮膚炎、水や飼料の消費量、成績、羽の状態
b) 照明
適切な長さの連続した明期が必要である。
肉用鶏は鶏舎に収容された後、飼料や水を見つけ、活動が刺激され、また検査が適切に行えるよう、明期においては十分な明るさを確保し、かつ明るさを均等に保つものとする。
休息のため、24時間周期ごとに適切な長さの連続した暗期を設け、肉用鶏がストレスを軽減し、通常の行動や歩行、足の健康を保つために休息できるようにするものとする。
照明の変化に徐々に慣れる時間を設けるものとする。
福祉の状態を測り得る所見:歩様、代謝疾患、成績、行動、目の状態、損傷率
c) 空気の質
新鮮な空気を供給し、二酸化炭素、アンモニア、塵埃及び過剰な水分含量のような廃ガスを環境中から除外するため、常に適切に換気を行う必要がある。
肉用鶏の背の高さにおいて、アンモニア濃度が25 ppm を日常的に超えてはならない。
塵埃は最小に抑えられるものとする。肉用鶏の健康と福祉が人工換気システムに依存する状況
においては、適切な予備電源と警報システムを備えておくものとする。
福祉の状態を測り得る所見:呼吸器疾患の発生率、代謝疾患、目の状態、成績、接触性皮膚炎
d) 騒音
肉用鶏は様々な大きさや種類の騒音に適用することができる。しかし、家きん同士が積み重なるような、ストレス及び恐怖を示す反応を防ぐため、肉用鶏が突然の又は大きな騒音にさらされることは可能な限り少なくするものとする。
換気扇、給餌器またはその他の舎内外の器具は、発生する騒音が最小限となるよう設計、設置、操作、維持するものとする。
農場の位置は、可能な場合には、地域の騒音源を考慮した上で決めるものとする。
福祉の状態を測り得る所見:毎日の致死率、罹患率、成績、損傷率及び恐怖を示す行動
e) 栄養
肉用鶏は常に、年齢及び系統に適し、健康及び福祉のために必要な栄養を含んだ飼料を与えられるものとする。
飼料や水は肉用鶏が受け入れられるものとし、肉用鶏の健康に危害を加える濃度の汚染物質が含まれてはならないものとする。
有害微生物の繁殖を防ぐため、給水装置は定期的に清掃するものとする。
肉用鶏は毎日、適切に給餌されるものとする。水は、継続的に利用可能であるものとする。若い雛たちが適切に給餌・給水されるよう、特別な設備(provision)を設けるものとする。
餌または水が摂れない肉用鶏は、速やかに安楽死させるものとする。
福祉の状態を測り得る所見:飼料及び水の消費量、成績、行動、歩様、疾病、代謝疾患及び寄生虫感染の発生率、致死率、損傷率
f) 床、寝床、休息場所の表面及び敷料の質
鶏舎の床は、清掃・消毒が容易(な構造)であるものとする。
雛を地面から離し、砂浴び及びついばみやすくするため、緩く乾いた寝ワラ材を提供するものとする。
福祉及び衛生面に及ぼす悪影響を最小にするため、敷料を管理するものとする。
敷料の質が悪いと、接触性皮膚炎及び胸ダコを発生し得る。隣(または次)の鶏群の疾病予防のために、敷料は必要に応じて、交換又は適切に処理されるものとする。
敷料の質は、使用される材質や異なる管理方法に関連して決まる。材質の種類は慎重に選択されるものとする。敷料は、埃っぽく、固まったり湿ったりする状態ではなく、乾燥して砕けやすい状態で維持されるものとする。敷料の質の低下は、水の漏出、不適切な飼料配合、腸管感染症、換気不良及び過密飼育を含む一連の要因によって起こりうる。
非常に高い湿度が原因で他の床材が利用できず、すのこの床で肉用鶏が飼養される場合、床は適切に肉用鶏を補助し、怪我を防ぎ、糞が床下に落ちるもしくは適切に除去できるよう、設計、建築、維持されるものとする。
怪我を防止し保温するため、初生雛は、身体の大きさに合った適切な種類の床で飼育されるものとする。
初生雛を鶏舎収容前に敷料の上で舎飼いする場合、初生雛が通常どおりに行動でき、床に触れることがないよう、木くず、わら、籾殻、紙片、処理された使用済み敷料のような汚染されていない素材を層状に、十分深く敷いておくものとする。
福祉の状態を測り得る所見:接触性皮膚炎、羽の状態、歩様、行動(砂浴び、啄み)、目の状態、疾病、代謝疾患及び寄生虫感染の発生率、成績
g) 羽つつきと共食いの防止
肉用鶏は若いことから羽つつきや共食いは滅多に見られない。しかし、羽つつきや共食いが潜在的な問題となる場合には、明度の低減、啄む材料の提供、栄養調整、飼養密度の低減、適切な遺伝系統の選抜といった管理手法を実施されるものとする。
断嘴はこれらの管理手法がうまくいかない場合の最終的な手段である。
福祉の状態を測り得る所見:損傷率、行動、羽の状態、死亡率
h) 飼養密度
肉用鶏は飼料と水を摂ることができ、身体を動かし、正常な姿勢を取ることができるような飼育密度で舎飼いされるものとする。以下の要因が考慮されなるものとする:管理能力、環境条件、舎飼い方式、生産方式、敷料の質、換気、防疫措置の方策、種鶏、出荷年齢及び体重
福祉の状態を測り得る所見:損傷率、接触性皮膚炎、死亡率、行動、歩様、疾病、代謝疾患及び寄生虫感染の発生率、成績及び羽の状態
i) 屋外の飼養場所
肉用鶏は、十分な羽毛で覆われ、安全に活動できる年齢になったら、すぐに屋外に出すことができる。鶏が鶏舎を自由に出入りできるよう、十分な面積の出口を設けるものとする。
部分的な舎飼い及び完全な屋外生産方式においては、屋外の飼養場所の管理が重要である。肉用鶏が病原体又は寄生虫に感染する危険性を減らすため、土地及び牧草地の管理措置を講じるものとする。飼養密度を制限すること又はいくつかの土地を交代で連続的に使用することが、そのような措置に含まれ得る。
屋外の飼養場所は、水はけのよい土地に設置し、沼地やぬかるみを最小限にするよう管理するものとする。
屋外の飼養場所には、肉用鶏を庇護する場所(shelter)を用意し、有害植物や汚染物質があってはならないものとする。
完全な屋外生産方式では、気候条件の悪影響から肉用鶏を保護するものとする。
福祉の状態を測り得る所見:行動、寄生虫感染の発生率、成績、接触性皮膚炎、羽の状態、損傷率、致死率、罹患率
j) 捕食者からの保護
肉用鶏を、捕食者から保護されるものとする。
福祉の状態を測り得る所見:恐れを示す行動、致死率、損傷率
k) 肉用鶏の系統の選択
特定の場所や生産システムにおける遺伝系統を選択する際には、生産性だけでなく、福祉や健康面も考慮するものとする。
福祉の状態を測り得る所見:歩様、代謝性疾患、接触性皮膚炎、致死率、行動、成績
l) 苦痛を伴う措置
断嘴、爪切り、断冠のような苦痛を伴う措置は、肉用鶏に対して日常的に行われないものとする。
治療的な断嘴が必要な場合にはできるだけ若齢のうちに、訓練を受け熟練した職員が行うこととし、痛みを最小にし出血を抑える方法を用いて、必要最小限の嘴を除去するよう注意するものとする。
外科的な去勢は、適切な鎮痛及び感染を抑える手段を取らずに実施すべきではなく、かつ獣医又は獣医の監督の下、訓練を受け熟練した職員のみが実施するものとする。
福祉の状態を測り得る所見:致死率、淘汰及び罹患率、行動
m) (肉用鶏の)取扱いと検査
肉用鶏は、少なくとも毎日、検査するものとする。検査には、主に3つの目的がある:病気または怪我をした肉用鶏をみつけ、治療または殺処分する、鶏群の福祉又は健康上の問題を見つけて改善する、そして死亡した肉用鶏を取り除くことである。
検査は、例えば、ゆっくり静かに群れの中を歩くなど、肉用鶏を不必要に刺激しないように行われるものとする。
肉用鶏を取り扱う際には、怪我をさせたり、不必要に怯えさせたり、ストレスを与えてはならないものとする。
肉用鶏が不治の病、著しい奇形や怪我を負った場合には、鶏群から取り除き、第7.6 章に記載されたとおり、できる限り早くに安楽死されるものとする。
脊椎脱臼は、第 7.6.17 条に記載されたとおり、適切な能力に基づき実施される限りにおいて、少数の肉用鶏を殺処分するために許容されている方法である。
福祉の状態を測り得る所見:行動、成績、損傷率、致死率、鶏鳴、罹患率
n) 職員研修
肉用鶏に責任を持つ全ての者は、適切な研修を受けているかまたは責務を履行できる能力を身につけていることを証明することができなければならず、肉用鶏の行動、取扱い技術、緊急の処分方法、防疫措置、疾病の一般的な徴候、動物福祉の欠如を示す指標及びその緩和策に関する十分な知識を持っているものとする。
福祉の状態を測り得る所見:全ての福祉の状態を測り得る所見が該当し得る。
o) 緊急時の計画
肉用鶏生産者は、自然災害、疾病の発生、機械装置の故障の影響を最小化及び軽減するための緊急時の計画を作成しておくものとする。計画には、機能異常を検出するための安全警報装置、予備発電設備、維持管理業者の確保、代替暖房又は冷却装備、農場の貯水能力、水の運搬業者の確保、農場での飼料の適切な備蓄と代替飼料の供給先の確保並びに換気の非常事態への対応策といった事項を含むものとする。
緊急時計画は、獣医サービスにより作成又は推奨される国内計画と整合していなければならない。人道的な殺処分もまた、緊急時計画に含まれるものとする。
p) 農場の立地、建築及び設備
肉用鶏の農場の立地は、火事・洪水、その他の自然災害の影響を受けないよう、可能
な限り安全な場所を選ぶものとする。さらに、防疫措置の危機、化学的・物理的汚染物質への肉用鶏の曝露、騒音及び気候条件の悪影響を回避し、又は最小にする場所に、農場を立地するものとする。
肉用鶏が出入りする鶏舎、屋外の飼養場所及び設備は、肉用鶏に怪我や痛みを与えることのないよう設計し、維持されるものとする。火事その他の危害を最小にするよう、肉用鶏の鶏舎は建設され、電気及び燃料設備が設置されるものとする。
肉用鶏生産者は、壊れた場合に肉用鶏の福祉に危害を加えかねない全ての設備に関して、維持管理計画を組むものとする。
q) 農場での収穫
と殺予定時間の前に、肉用鶏に給餌しない期間を過度に長くしないものとする。
水は収穫まで飲めるようにしておくものとする。
病気又は怪我で搭載又は輸送に適さない肉用鶏は、安楽死させるものとする。
捕獲は熟練した動物取扱者が実施し、ストレス及び恐怖を示す反応並びに怪我をできるだけ少なくするためにあらゆる手段をとるものとする。捕獲時に肉用鶏が怪我をした場合には、安楽死させるものとする。
肉用鶏の首または翼を持って持ち上げてはならないものとする。
肉用鶏を、注意深く輸送用コンテナに入れるものとする。
捕獲機を使用する場合には、肉用鶏の怪我やストレス、恐怖を最小限にするよう設計、操作、手入れをするものとする。機械が故障した場合に備えて、緊急時対応策を作成しておくことが望ましい。
捕獲時には、肉用鶏を落ち着かせるため、薄暗いもしくは青い照明の下で行われるものとする。
捕獲は、と殺までの時間を最短にし、捕獲・輸送及び補綴された状況での気候的ストレスを最小とするよう計画されるものとする。
輸送コンテナの収容密度は、気候条件に適し、快適さが維持されたものとする。
コンテナは肉用鶏の怪我を防止するよう設計し手入れされていなければならず、清掃し、必要に応じて定期的に消毒するものとする。
福祉の状態を測り得る所見:行動、鶏鳴、損傷率、収穫時及び食鳥処理場到着時の致死率
翻訳協力:アニマルライツセンター翻訳チーム Misaki Takahashi
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