日本の状況-アニマルウェルフェア(動物福祉)

日本には現在、畜産動物の飼育方法について、実行力のある法規制なく、諸外国が禁止しているバタリーケージ妊娠ストールが、一般的に使用されているという状況です。
しかし、海外にかなり後れをとってはいますが、日本においても少しずつ畜産動物福祉への取り組みが進んでいます。

数値で見る日本のアニマルウェルフェア
ケージやストールの使用率、去勢や断角の有無など、全国実態調査に基づいた日本の状況については、こちらをご覧ください。

国レベルでの動き

▼2011年 アニマルウェルフェアの考え方に対応した飼養管理指針▼
2011年に、畜種ごとの「アニマルウェルフェアの考え方に対応した飼養管理指針」が公表されました。しかし残念ながら、年月をかけて策定されたこの指針は、業界紙などに掲載はされましたが、2014年まで各自治体への周知が行われていませんでした。
そのため畜産農家と直接つながりのある行政の担当者であっても「アニマルウェルフェア」という言葉すら知らない方もいました。そのため、各自治体の担当部署にこの指針を周知していただくよう農水省に求めていたところ、2014年にようやく、農林水産省のサイトに「アニマルウェルフェアについて」というページが追加されたのを機に、各自治体への「アニマルウェルフェアの考え方に対応した飼養管理指針」の通達がなされました。この指針には法的拘束力はなく、アニマルウェルフェアのレベルも低いものではありますが、暴力的な手技が日常化している畜産業にあっては、意識の改善にはつながるのではないかと思います。
*アニマルウェルフェアの考え方に対応した飼養管理指針はOIE動物福祉基準の改訂に合わせて随時改訂されています。

▼2014年 パンフレット「アニマルウェルフェアの向上を目指して」▼
2014年6月には「アニマルウェルフェアの向上を目指して」というパンフレットが作成されています。このパンフレットには、動物の正常行動を促すための方法などが掲載されています。豚なら豚房に鎖やボールを設置してあげる、採卵用鶏なら従来型のバタリーケージに止まり木と巣箱兼砂浴び場を設置する方法などが、写真入りで掲載されており、「アニマルウェルフェアの考え方に対応した飼養管理指針」よりも、具体的でわかりやすいものになっています。

▼2016年 OIE動物福祉基準への対応▼
2016年6月、ブロイラー、肉用牛、乳用牛の「アニマルウェルフェアの考え方に対応した飼養管理指針」が、OIE(世界動物保健機関)の「アニマルウェルフェアと肉用鶏生産方式」アニマルウェルフェアと肉用牛生産システム」「アニマルウェルフェアと乳用牛生産システム」の動物福祉基準に対応するものに変更されました。さらに飼養管理指針には、生産者自らがアニマルウェルフェアの取り組み状況を自己点検するためのチェックリストも追加されました。

▼2016年 農林水産省から各県へアニマルウェルフェアの推進を要請▼
2016年9月30日、農林水産省から各県に対し、生産者自らがアニマルウェルフェアの取り組みを進めるよう指導要請されました。

「農林水産省生産局畜産部は、9月30日に農水省講堂で開催した平成28年度第1回全国畜産課長会議で、28年度補正予算や29年度当初予算概算要求の概要、各課の主な施策などを説明した。この中で、畜産部の畜産振興課から各県に対し、「アニマルウェルフェアに関する取り組みの自己点検の取り組み改善を進めるよう指導してほしい」と要望した。
わが国におけるアニマルウェルフェアの推進では、平成21年から(公社)畜産技術協会を中心に、畜種ごとの「アニマルウェルフェアの考え方に対応した飼養管理指針」を作成。ただ、26年度に実施したアンケート調査で、同指針の生産現場への浸透が不十分であったことから、今年度は指針の改定とあわせて生産者自らがアニマルウェルフェアの取り組み状況を自己点検するためのチェックリストを作成し、農水省も積極的な活用への指導を要請したもの。」
(鶏鳴新聞「畜種ごとにアニマルウェルフェアのチェックリスト作成 自己点検での活用へ 畜産技術協会」より引用)

▼2017年 厚生労働省からと畜場へ飲水設備の設置を促す通知▼
現在、日本の多数のと畜場で飲水設備が設置されておらず、牛や豚が最期の日に満足に水が飲めないという状況にあります。民進党小川勝也参議院議員の質問を機に、2017年3月8日、厚生労働省から各都道府県・各保健所設置市へ、「新設及び改築等が行われると畜場の獣畜の飲用水設備の設置について」が通知されました。この通知は、OIEの動物福祉基準にも言及し、と畜場へ飲水設備の設置を促すものとなっています。
 詳細→ http://www.hopeforanimals.org/slaughter/515/

▼2017年11月 農林水産省通知「アニマルウェルフェアに配慮した家畜の飼養管理の基本的な考え方について」▼
(公社)畜産技術協会の結果「アニマルウェルフェアに配慮した飼養管理指針」に反する状況があることが分かったこと、また2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会でアニマルウェルフェアが求められることから、同指針の周知徹底を促すために通知された。

▼2017年 東京オリンピック・パラリンピックへ対応したアニマルウェルフェア▼
これまでのリオ、ロンドンオリンピックのアニマルウェルフェア基準に比べてかなりレベルが低いものではありますが、東京オリンピック・パラリンピックについてもアニマルウェルフェアへの対応が求められることになりました。

2017年3月24日、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会は選手村の食事など大会で使用する農産物と畜産物の調達基準を決定した。畜産物は農産物の要件に加え、快適性に配慮した家畜の飼養管理も要件に入った。アニマルウェルフェアの考え方に対応していることが必要になる。
(全国農業新聞2017.3.31より引用)

▼2018年1月20日にベルリンで開催された農業大臣会合(日本からも参加)で畜産の持続可能な未来には動物福祉が不可欠であることを示す声明が採択▼
声明では動物福祉の向上を目指すこと、OIEのグローバルな動物福祉戦略とその実施をサポートするなどが示されている
 詳細→ https://www.hopeforanimals.org/animal-welfare/global-forum-for-food-and-agriculture/

▼2018年より食肉処理施設への交付基準に「飲水設置」と「アニマルウェルフェア」が追加▼
国が実施している「強い農業・担い手づくり総合支援交付金」。2018年からは交付対象となる食肉処理施設の実施基準として
畜産物処理加工施設のうち産地食肉センターの整備を実施する場合にあっては、と畜残さ等の再資源化等の有効活用及びアニマルウェルフェアに配慮した獣畜の取扱いに努めるものとする。
また食肉処理施設のけい留施設として
同施設には、獣畜の飲水設備を設置するものとする。(特段の事由がある場合は、この限りでない。)
が追加されました。

▼2018年3月 採卵鶏の夜間放置について、農水・厚労・環境各省から注意喚起の通知▼
採卵鶏は産卵成績が落ちる1年~2年で屠殺されています。その採卵鶏が養鶏場から屠殺場(食鳥処理場)へ長時間かけて運ばれてきた後に、屠殺までに長時間放置されていることがアニマルライツセンターの調査で明らかになりました。この問題について、2018年3月26日に、農林水産省が改善を促す通知を出し、同時に厚生労働省からも通知が、環境省からも事務連絡が出されました。
 詳細→ https://www.hopeforanimals.org/eggs/holding-long-time/

▼2019年2月22日 採卵鶏の夜間放置について、農水省から三度目の通知▼
厚生労働省による採卵鶏の夜間放置調査の結果を受けて、農林水産省から食鳥処理場への鶏の計画的な出荷を行うよう三度目の通知(一度目は2018年3月26日、二度目は同年11月15日)が出されました。
 詳細→ https://www.hopeforanimals.org/eggs/there-is-a-slaughterhouse-that-abandons-chickens-72-hours/

▼2019年6月 輸送・殺処分についてもアニマルウェルフェア指針が公表▼
アニマルウェルフェアの考え方に対応した家畜の輸送に関する指針アニマルウェルフェアの考え方に対応した
家畜の農場内における殺処分に関する指針が公表されました。従来からあった、鶏・豚・牛の指針についても改訂版が公表されました。豚の指針改定においてはこれまでになかった「繁殖雌豚は、他の豚と同様に社会的な動物であり、群で生活することを好むことから、このようなことに配慮しつつ、群飼の実施を検討することが推奨される」という一文が追加。(つまり、妊娠ストールから群れ飼育への切替が推奨されることになった。これは2018年5月に、OIEが「アニマルウェルフェアと豚生産システム」を採択したことに伴う追加である。)

▼2020年3月 改訂版「アニマルウェルフェアに配慮した家畜の飼養管理の基本的な考え方について」通知▼
2017年11月の改訂版が、動物愛護管理法改正にともない通知された。輸送や殺処分の指針を含めたより詳しい内容となっている。

▼2020年3月31日「酪肉近の基本方針」にOIEの動物福祉基準、「家畜(鶏の)改良増殖目標」にアニマルウェルフェアが追加▼
改正された「酪肉近の基本方針」に、「国際獣疫事務局(OIE)が示す国際的な指針を踏まえ、「5つの自由」に沿った飼養管理の基本的な考え方等について、技術指導通知を発出する~」となどの文が追加、一緒に改正された「改良増殖目標」にはこれまでなかったアニマルウェルフェアへの配慮が盛り込まれた。
 詳細→ https://www.hopeforanimals.org/broiler/result-publiccomment/

▼2020年3月31日 「食料・農業・農村基本計画」にアニマルウェルフェアが追加▼
「食料・農業・農村基本計画」が改正され、「アニマルウェルフェアの普及・定着を図る」の一文が追加されました。
 詳細→ https://www.hopeforanimals.org/eggs/2020decision-keikaku/

▼2020年6月1日 改正動物愛護管理法が施行▼
同法律を実施するための関係機関の連携については「畜産」が、殺処分方法については「国際的動向に十分配慮するよう努めなければならない」ことが追加された。
 → https://arcj.org/issues/legal-advocacy/new-law-of-animal-protection/

▼2020年6月12日▼「放牧の中止」が削除
家畜伝染病予防法に基づく飼養衛生管理基準改正(牛・豚)に「大臣指定地域においては、放牧場、パドック等における舎外飼養を中止」というものが盛り込まれていたが、パブリックコメントを受けてこれが削除された。

国会におけるアニマルウェルフェア質疑

▼2016年3月10日▼
参議院農林水産委員会で、小川勝也議員(民主党・新緑風会)が畜産動物のアニマルウェルフェアについて言及しました。
小川議員は冒頭「私は日本は先進国だとならってきて祖国に誇りを持っていた。しかし近年日本が世界に劣っているなあと思う分野がいくつかある。その中でも一番劣っているのがアニマルウェルフェアの概念だと思います」と述べ、日本の畜産動物福祉の評価が、中国やフィリピンよりも劣っていることを明らかにしました。そして、アニマルウェルフェアの意識を高めることを求めました。
 詳細→ https://www.hopeforanimals.org/animal-welfare/440/

▼2016年10月18日▼
TPP特別委員会で松浪健太議員(日本維新の会)からアニマルウェルフェアについての発言がありました。
ラクトパミンやホルモン剤が使用された畜産物が日本で流通していることについて、「アニマルウェルフェアという言葉があるけど、こういうやり方は日本には合わない」「一種の動物虐待だと思う」と発言。農水省の示す五つの自由、海外の基準を提示し、こういうやり方は違うと思う、「アニマルウェルフェアを含めたあらゆる角度からやれば世界が健康になる。対外貿易戦略はそのように取り組んでいくべき。」と発言しました。
 詳細→ http://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php?ex=VL&deli_id=46082&media_type=fp

▼2017年2月27日▼
民進党小川勝也参議院議員から、「畜産業におけるアニマルウェルフェアに関する質問主意書」が伊達忠一参議院議長に対し提出されました。東京オリンピック・パラリンピック競技大会にも絡め、畜産物調達における動物への配慮を農林水産省に、またと畜場の動物用飲水設備の設置についても、質問されました。
 詳細→ http://www.hopeforanimals.org/animal-welfare/510▼2017年12月5日▼
衆議院議員である堀越啓仁議員が、衆議院環境委員会で、動物愛護法の中で畜産動物が動物取扱業から除かれ、さらに個別の条項がないことに言及した。また2020年オリンピック・パラリンピックが控える中でのアニマルウェルフェアの取り組みが遅れていることに対し危機感を示した。
 詳細→ http://www.hopeforanimals.org/animal-welfare/564▼2018年2月23日▼
衆議院予算委員会第6分科会で、堀越啓仁(立憲民主党・市民クラブ)衆議院議員が、ケージフリー飼育への切り替えやストールフリー飼育への切り替えなどの、設備投資を必要とするアニマルウェルフェアの改善について、農林水産省がどのような対策を考えているのかなどについて質問されました。
 詳細→ http://www.hopeforanimals.org/transport/20180223-budget-committee/▼2018年5月29日▼ 参議院農林水産委員会で、川田龍平議員が「鳥インフルエンザの発生、蔓延の原因がこの大規模な密飼い、非常に密集したところで飼っている鳥の抵抗力の弱体化にあるのではないか」と、農林水産省に見解を問いました。あた議員はブロイラーや採卵鶏の飼育密度が狭すぎることを指摘し、EUの例を出し、バタリーケージの廃止を訴えました。
 詳細→ 国会会議録検索システムから川田龍平議員の質疑を検索してください▼2018年6月6日▼
衆議院 厚生労働委員会で、初鹿明博衆議院議員(立憲民主党・市民クラブ)が畜産動物のアニマルウェルフェアについて質問されました。 初鹿議員は、国際的に取り組みが進む”ワンヘルス(One health)”という人の健康も、動物の健康も、環境の健康もすべてつながっているのだという考え方について言及し、日本のと畜場で動物が水が飲めない状況、食鳥処理場での鶏の長時間放置などの事例を紹介し、ワンヘルスを進める上で欠かせないアニマルウェルフェアの推進を求めました。
 詳細→ http://www.hopeforanimals.org/animal-welfare/kousei-roudou-0606/▼2018年6月8日▼ 衆議院環境委員会にて、堀越啓仁衆議院議員(立憲民主党・市民クラブ)が質問に立ち、環境省、農林水産省に対して畜産動物福祉(アニマルウェルフェア)についての取り組みを促しました。堀越議員は食鳥処理場での鶏の残酷な扱いと畜場で豚に執拗にスタンガンを押し当てるなどの事例を紹介し、OIEの動物福祉規約に違反しており、動物愛護管理法にも違反しているのではないかと指摘しました。  詳細→ http://www.hopeforanimals.org/transport/3-8-environment-committee/▼2018年7月6日▼ 衆議院厚生労働委員会で、立憲民主党の初鹿明博議員が豚のと畜場での飲水設備の設置を求めました。「動物福祉は担当ではない」とする厚労省に対して、「起こっている現場は厚労省の所管であると畜場」だとのべ、改善への取り組みを求めました。  詳細→ https://www.hopeforanimals.org/pig/kousei-roudou-0706/▼2018年11月21日▼ 衆議院農林水産委員会で堀越啓仁議員がアニマルウェルフェアの推進の必要性、具体的な課題について質問しました。2016年にOIE(世界動物保健機関)が行った日本のPVS評価の中のアニマルウェルフェアについての勧告(Recommendation)への対応などについての見解を求めました。また善かい堀越議員が指摘した採卵鶏の長時間放置についても再度質問が行われた。
 詳細→ http://www.hopeforanimals.org/eggs/aff-committee/▼2019年5月11日▼ 衆議院環境委員会において堀越けいにん議員から原田環境大臣に、畜産動物の適正な飼育における環境省の役割について質問が行われました。大臣からは「動物愛護管理法での動物の取り扱いの考え方は、産業動物の飼養飼い方においても尊重されると考える」「関係省庁との連絡体制を強化し、産業動物の適正な取扱が実施されるように取り組みを進めたい」との答弁がありました。
 詳細→ https://www.hopeforanimals.org/animal-welfare/law-does-not-work-in-japan/

▼2019年5月22日▼
2019年2月1日に発行した日本とEU間の経済連携協定(以下EPA)の第十八章 規制に関する良い慣行及び規制に関する協力の中の第B節に、「動物の福祉」について規定されました。このことについて衆議院農林水産委員会で堀越けいにん議員が質問を行いました。
 詳細→ https://www.hopeforanimals.org/animal-welfare/jpeuepa-20190522/

▼2019年5月31日▼
衆議院環境委員会において、堀越啓仁議員が、鶏たちを生きたまま茹で殺す”放血不良”の問題について改善と、OIEの動物福祉規約の周知徹底を求めました。
 詳細→ https://www.hopeforanimals.org/broiler/cadaver-should-be-illegal/

▼2019年11月12日▼
衆議院消費者委員会で、堀越議員はエシカル消費の中にも含まれるアニマルウェルフェア、その経済への影響、投資への影響、集約的畜産のリスクを説明し、消費者を教育する役割を担う消費者庁の力が必要であることを強く訴えました。これに対し、衛藤 晟一内閣府特命担当大臣(消費者及び食品安全)からは「そのとおりだと思いますから、今まで消費者庁も、チラシを配ったりとかいろいろな形の啓発の努力はしておりますけれども、更にもっともっと努力をさせていただかなきゃいけないなということをつくづく感じたところでございますので、そういう方向で頑張ります。」との答弁がありました。
 詳細→ https://www.hopeforanimals.org/animal-welfare/20191112-consumer-committee/

▼2019年12月3日▼
堀越啓仁衆議員が環境委員会で小泉進次郎環境大臣に対し、畜産動物のアニマルウェルフェアの必要性について問いかけました。また、2019年5月の環境委員会で環境省がやるといったOIE動物福祉規約の周知徹底について改めて確認しました。環境省からは地方行政担当者向けの研修会でOIEの動物福祉規約等の内容についても説明したとの答弁がありました。
 詳細→ https://www.hopeforanimals.org/animal-welfare/oie-20191203/

▼2020年2月19日 動物福祉(アニマルウェルフェア)を考える議員連盟発足▼
立憲民主党生方議員を中心に超党派(与野党無所属含め)で設立されました。
 詳細→ https://arcj.org/issues/animal-welfare/aw-giren/

▼2020年6月9日▼
衆議院農林水産委員会で堀越啓仁議員が、家畜伝染病に基づく飼養衛生管理基準案に突如加えられた「放牧中止」について、アニマルウェルフェアの重要性を訴え、江藤大臣の意見を仰ぎました。
 詳細→ https://www.hopeforanimals.org/pig/disappointed-by-the-minister-trying-to-solve-with-money/

アニマルウェルフェアへの予算

アニマルウェルフェアの向上を目的とした予算が確保されるようになってきています。
*2014年以降を掲載していますが、これ以前もアニマルウェルフェアの予算は出ています。また、下記はアニマルライツセンターの把握したもののみ掲載しています。

▼2014年▼
1.JRA*1の平成26年度畜産振興事業として
アニマルウェルフェア専門家養成事業
[事業の内容]家畜・家禽のアニマルウェルフェア(以下、「AW」という。)の普及を図るため、テキストの作成及び研修会を開催し、生産者等のAWに関する正しい知識の習得及び農場等におけるAWの状況を把握することのできる専門家を養成することを目的とする事業。
[事業実施主体]公益社団法人 畜産技術協会
[事業実施期間]平成26年度から2年間以内
[交付金の額]478万円

2.独立行政法人農畜産業振興機構(エーリック)による畜産業振興事業の一つ「国産畜産物安心確保等支援事業」の中の「快適性に配慮した家畜の飼養管理推進事業」の中から約1,500万円の予算で、飼養実態アンケート調査が実施された。実施主体は公益社団法人 畜産技術協会。

▼2015年▼
独立行政法人農畜産業振興機構(エーリック)による畜産業振興事業の一つ「国産畜産物安心確保等支援事業」の中の「快適性に配慮した家畜の飼養管理推進事業」として約2,000万円で”乳用牛ベストパフォーマンス実現マニュアル”の作成などが行われた。実施主体は公益社団法人 畜産技術協会
*「快適性に配慮した家畜の飼養管理推進事業」の内容は『アニマルウェルフェアの国際的な動向に関する情報提供、アニマルウェルフェア向上に向けた検討等を支援する。』となっている。しかし実際にはこの”乳用牛ベストパフォーマンス実現マニュアル”は生産性を重視したもので、アニマルウェルフェア事業とは言えないのではないというのがアニマルライツセンターの考えである。

▼2016年▼
独立行政法人農畜産業振興機構(エーリック)による畜産業振興事業の一つ「国産畜産物安心確保等支援事業」の中の「快適性に配慮した家畜の飼養管理推進事業」の中から約800万円の予算で”アニマルウェルフェアの考え方に対応した飼養管理指針”がOIEのアニマルウェルフェア国際基準に合うものに改定された。実施主体は公益社団法人 畜産技術協会

▼2017年▼
畜産動物福祉に関する、2017年度JRA*1畜産振興資金

採卵鶏のAWに関する実証調査事業
(1)事業の概要 採卵鶏における我が国の気候風土環境下に対応したAW(アニマルウェルフェア)推進を図るため、AW対応鶏舎に関する実証調査を実施し、飼養管理の実態に即した知見を得るとともに、採卵鶏の飼養管理指針改訂のための検討及び改善策等を加えたモデルの作成、提示を行う事業。
(2)事業内容
① AW対応鶏舎における養鶏の実証調査・分析。
② 国内外のAWに対応した鶏舎等に関する調査・情報収集。
③ 各種調査・分析結果の報告書の作成。
④ AWに対応した鶏舎モデルの作成・提示。
(3)事業実施主体 公益社団法人 畜産技術協会
(4)事業実施期間 平成29年度から3年間以内
(5)交付金の額 54,494千円

AWに配慮した家畜輸送等指針作成事業
(1)事業の概要 家畜の生産・流通等でのAW向上を図るため、国際的なAW基準に対応した家畜の輸送及び疾病管理目的の殺処分に関する指針を作成するとともに、生産者及び畜産関係機関等に配布する事業。
(2)事業内容
① 国内外における家畜の輸送・疾病管理目的の殺処分に関する情報収集。
② 生産現場、家畜診療所等を対象とした意見交換会の開催。
③ 指針の策定及び周知。
(3)事業実施主体 公益社団法人 畜産技術協会
(4)事業実施期間 平成29年度から2年間以内
(5)交付金の額 7,802千円

▼2018年▼
平成30年度農業生産工程管理推進事業のうち畜産GAP推進加速化事業として、畜産技術協会に1200万円の交付金*2。内容は下記のとおり。

ア GAP取得チャレンジシステム普及推進
 国際機関、諸外国等におけるアニマルウェルフェアに関する検討及び実施の状
況、国内における飼養管理、流通等の実態調査、アニマルウェルフェアに関する
国際基準の策定、改訂等に対応した畜種ごとのアニマルウェルフェアの考え方に
対応した飼養管理指針の検討等及び調査、検討の結果を踏まえた事業成果報告書
の作成を実施。
イ GAP認証取得誘導、動物福祉配慮飼養管理普及
 我が国におけるアニマルウェルフェアの考え方を普及・啓発するための研修会
等の開催、パンフレットの作成・配布、飼養管理の指導を実施。

※GAP取得チャレンジシステムは、アニマルウェルフェア飼養管理指針の自己チェックすればよいだけ、また日本のGAP(JGAP)もアニマルウェルフェア飼養管理指針の自己チェック、プラス『家畜の輸送に当たっては、アニマルウェルフェアに配慮するとともに、家畜の衛生管理ならびに安全の保持および家畜による事故の防止に努めている』というもので、具体的な規定はありません。そのためアニマルライツセンターはこの二つのGAPは非常に緩く、動物福祉を担保できるものではないと考えています。

▼2019年▼

JRA*1の平成31年度畜産振興事業として廃鶏とされる鶏の保管・輸送に関する動物福祉への交付が行われました。アニマルライツセンターがこれまで取り組み、国会でも取り上げられた採卵鶏の夜間放置の問題に対処するためのものだと思われます。

成鶏処理流通円滑化推進事業
(1)事業の概要
この事業は、成鶏のアニマルウェルフェア(以下、「AW」という。)に配慮した輸送・保管並びに成鶏肉の消費拡大を推進するため、鶏生体輸送容器の検討及びモデルの作成・普及を図り、国際的なAWへの取組に対応するとともに、鶏本来の旨味と適度な歯応えを味わえる調理方法をPRし、商品価値を高め、成鶏肉の消費拡大を図ることにより、成鶏処理流通の円滑な推進と国内鶏卵産業の安定化に資することを目的とする。
(2)事業内容
① 鶏生体輸送容器開発
AWに対応した成鶏輸送を推進するため、鶏の輸送・保管実態の把握及びAWに対応した鶏生体輸送容器の検討・開発し、モデル容器の作成、提示を行う。
② 成鶏肉消費拡大対策
成鶏肉の需要拡大と商品価値を高めるため、新たな調理方法等を開発するとともに、レシピ集の作成や試食会等を開催し、消費者等への普及・宣伝を行う。
(3)事業実施主体
一般社団法人 日本養鶏協会
(4)事業実施期間
2019年度
(5)交付限度額
9,890千円

*1 日本中央競馬会(JRA)は、日本中央競馬会法第19条第4項の規定に基づき、農林水産大臣の認可を受け、本会の剰余金を活用して、畜産の振興に資することを目的とする事業に助成を行う法人に対して、資金を交付しています。
*2 http://www.maff.go.jp/j/aid/kohu_kettei/h30/index.html 生産局 一般会計参照

都道府県の動向

茨城県

2016年4月に公表された茨城県養豚振興計画では、豚の飼養衛生管理の高度化に関する事項として、群管理システムの推進が挙げられている。(茨城県は豚の飼養戸数が全国第3位)

『効率的・省力的に飼養管理を行うために,リキッドフィーディングシステム※や群管理システム※※など高度な技術導入を推進する。
※ リキッドフィーディングシステム:液状化した飼料を各豚房に給餌するシステム。
※※ 群管理システム:繁殖豚を一群で管理するシステムで,従来のストールに比べ,豚のストレスを軽減できる。飼料給与量やワクチネーションなどは,コンピュータで管理する。』

宮城県

2017年9月12日、宮城県議会の一般質問にて、境 恒春(さかいつねはる)議員(みやぎ県民の声)からアニマルウェルフェアについて、採卵鶏のバタリーケージやブタの拘束飼育(妊娠ストール)の問題、県がアニマルウェルフェアへどのように取り組むのか、宮城県内のと畜場の福祉についての質問がなされました。
県の回答では、畜産クラスターという大規模な畜産の補助金制度があり、その制度をアニマルウェルフェアを利用することを支援することなどが示されました。
 詳細→ http://www.hopeforanimals.org/animalwelfare/00/id=553

企業のアニマルウェルフェア動向

▼2017年9月12日 コープさっぽろ全店で平飼い卵▼
コープさっぽろ全店108店舗 で、9月から「平飼いの卵」取扱いがはじまりました。コープさっぽろのサイトでは「既にEU諸国ではアニマルウエルフェア(動物福祉)の観点からケージ飼いの卵の販売を禁止している動きがでている中、日本においても近年同様な考えから平飼いの卵を購入したいという組合員さんの要望に応えるため、この度全店での取扱いを始めることといたしました。」と平飼い卵の取り扱いに至った経緯が掲載されています。
このニュースは北海道のテレビ番組でも取り上げられ「土をかいて、虫を落とす動作がある」などと平飼い鶏とケージ鶏の違いについても言及されました。

▼2019年5月18日 秋川牧園、平飼い卵を香港の高級スーパーで販売開始▼
「無投薬の鶏肉などを製造販売する秋川牧園は香港の高級スーパーで鶏卵と焼き鳥の販売を始めた。焼き鳥は以前にもあるが、鶏卵を輸出するのは今回が初めて。平飼い卵はは6個で600円を超えるが、アニマルウェルフェアを重視する欧米系の消費者から人気で、スーパー側から強く要請されたという。」(香港へ鶏卵初輸出 秋川牧園、スーパーで焼き鳥と販売 2019.5.18日本経済新聞より引用)

▼2019年6月5日 国立徳島大学は、徳島県、ミヤリサン製薬株式会社と協定を結び、アニマルウェルフェアに配慮した豚舎を整備、研究実証に取り組む▼
国立徳島大学は、徳島県、ミヤリサン製薬株式会社と「産官学連携による次世代型畜産研究実証事業の実施に関する協定」を締結した。動物福祉対応型実証豚舎施設を整備し、アニマルウェルフェアの向上、疫病低減、畜産の生産性を向上させる新技術及び飼育システムの開発並びにそれらの普及に関すること、人材の育成などに取り組む。(徳島県、ミヤリサン製薬株式会社と産官学連携協定を締結2019.6.13徳島大学WEBサイトより引用)

▼2020年2月19日 イオンがプライベートブランドで平飼い卵販売開始▼
関東地域24店で売り出し、年内に100店、2022年度の全国展開をめざすという。
朝日新聞 卵にも「動物の福祉」 イオンがPBで平飼い卵発売へ

▼2020年3月 HORIZON FARMS(愛知県名古屋市)がケージフリー、ベターチキン、ストールフリーのトリプルAW宣言▼
開店以来、放牧にこだわるHORIZON FARMS 日本初ストールフリー宣言
HORIZON FARMS ケージフリー(達成)とベターチキン トリプルAW宣言へ

→多国籍企業によるグローバルでの卵のケージフリー宣言にともない、日本もケージフリーとなった企業が近年増えています。詳細はコチラをご覧ください。

生産者のアニマルウェルフェア動向

▼2016年5月28日 AWFC・JAPAN設立▼
AWFC・JAPAN(Animal Welfare Food Community Japan)第一回設立総会が開かれました。
「このコミュニティは会員がAW畜産を実践する事で、 健康な家畜から安全で品質のよい食品を供給する事業を実現する。また 高い家畜福祉価値観をもつ同志の協働によって、相互助言し合い、各個別事業の補完をし合い日本国内においてのAWの認知度向上と一般消費者の理解を深めることを目的とする。」(第一回総会案内「活動目標」より)

▼2016年6月18日 アニマルウェルフェア畜産協会設立▼
家畜にできるだけストレスを与えない飼い方の普及を目指して「アニマルウェルフェア畜産協会」が設立されました。18日の設立総会で一定基準を満たした家畜の飼い方をしている生産者を協会として特別に認証する制度を始めることが報告されました。協会は、2016年9月をメドに認証されたことを示すマークを作成し、早ければ来年の春には生産者への認証を始めたいとしています。
 詳細→ http://www3.nhk.or.jp/sapporo-news/20160618/3161131.html

▼2017年10月 国内最大級ケージフリー型鶏舎(20万羽)が新設▼

鶏卵生産・販売のフュージョン(都城市、赤木八寿夫社長)が新富町日置に新設した国内最大規模となるケージフリー型の養鶏・採卵場が鶏卵業界の注目を集めている。欧米ではケージフリー型がアニマルウェルフェア(動物福祉)に対応した新基準として導入が広がっており、同社の取り組みは牛や豚など畜産業界全体に影響を与えそうだ。(2017.10.18宮日ビジネス「世界水準の卵生産へ」より引用)

▼2017年11月1日 鶏卵生産の仁光園でケージフリー▼

鶏卵生産の仁光園 鶏飼育でおり入れず「鶏卵生産の仁光園(富山県高岡市)は欧米で取り組みが進む、鶏をおりに入れない平飼い(ケージフリー飼育)を導入する。9千万円を投じて既存の鶏舎を改修し、年内に卵の出荷を始める計画だ。」「仁光園では現在7万羽の採卵鶏を飼養しており、このうち1万8千羽を屋根と壁に囲まれた鶏舎で放し飼いにする」(2017.11.1日本経済新聞)

▼2018年「最も取り組まねばならない課題はアニマルウェルフェア」 -鶏鳴新聞▼
2018年1月5日発行の鶏鳴新聞で「欧米のAWの考え方の根底には、キリスト教プロテスタントの宗教観や文化があり、採卵鶏では〝脱ケージ〟への動きがある。」として、日本で「最も真剣に取り組まなければならなくなりつつあるのは、アニマルウェルフェア(AW)についてである。」と掲載。
 詳細→ http://www.keimei.ne.jp/article/20180105t1.html​​​​​​​
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▼2018年 OIEの採卵鶏のアニマルウェルフェア基準に対して、アニマルウェルフェアのレベルを落とすよう日本養鶏協会と国際養鶏協議会が吉川農水大臣へ要望▼
今後示されるOIEのAW基準案に、「巣箱」と「止まり木」の設置を勧告する内容が追加される可能性があるとして、これらの団体は「国内の採卵養鶏の飼養方法にも大きな影響を与えかねない」「巣箱や止まり木の設置は現実的に不可能」だとして、日本の現状を踏まえたOIE改訂案になるよう川貴盛農林水産大臣に、要望書を提出した。
 詳細→ 日本の実状に適したAW(アニマルウェルフェア)基準に!

▼2019年1月18日 アニマルウェルフェア対策協議会発足▼
(一社)日本養鶏協会と(一社)国際養鶏協議会は「アニマルウェルフェア対策協議会」を合同で立ち上げた。その目的は”日本に適した採卵鶏の「アニマルウェルフェア基準」の策定とその実現に向けて活動すること”だという。同協議会はOIEの採卵鶏のアニマルウェルフェア基準に対して、アニマルウェルフェアのレベルを落とすよう農水大臣へ要望しており、「日本に適したアニマルウェルフェア」をどう定義しているのか、今後注視する必要がある。
 詳細→ AW対策協議会が正式発足 わが国に適したアニマルウェルフェア基準実現へ2019.2.15鶏鳴新聞日

▼2019年6月27日 動物福祉理解深める 養鶏農家ら対象に講演会▼
県養鶏農業協同組合(赤木紀元代表理事組合長)が養鶏農家らを対象にした講演会を開催。出席者約80人を前に、ニワトリにとって快適な環境で飼育、採卵している欧米の先進事例が紹介されました。
 詳細→ 「動物福祉理解深める 養鶏農家ら対象に講演会」 2019年6月28日宮崎日日新聞

生産者-アニマルウェルフェア意識調査結果

▼アニマルウェルフェアの考え方に対応した飼養管理指針の認知度▼
畜産技術協会2014年飼養実態アンケート調査報告書によると、農林水産省が普及に努めている「アニマルウェルフェアの考え方に対応した飼養管理指針」の認知度は次のとおり。

肉用牛26.7%
乳用牛22.2%
採卵鶏59.5%
ブロイラー35.7%
ブタ51.7%

▼日本養豚協会による調査▼

養豚業界におけるアニマルウェルフェア調査が、日本養豚協会により継続されています。
この調査で、妊娠ストールの使用率にはへんかがないものの、群飼育を検討したいとする経営体が10%強、いることが分かりました。また去勢や尾・歯の切断の際、麻酔をしている経営体もあることが分かりました。
 詳細→ https://www.hopeforanimals.org/pig/pigfarms-survey/

消費者のアニマルウェルフェア意識調査結果

▼畜産動物に関する消費者意識・行動調査▼
2014年、アニマルライツセンター主体で「畜産動物に関する消費者意識・行動調査」を行いました。この調査では消費者に畜産の現状を示し、こういった状況をどう考えるかという質問を行っています。結果、約8割の人が、畜産動物が放牧などで自然な行動ができることを望んでいる事が分かりました。また麻酔なしで体の一部を切断する行為もそのままでよいと答えた人は1~2割にとどまり、多くの人が現状の飼育方法に問題意識を持ったことがわかりました。
アニマルウェルフェアが広がる下地は日本にも十分あるということをこの調査結果は表しているといえます。

▼アニマルウェルフェアの認知度調査▼
アニマルライツセンターは2016年から毎年一回、畜産動物の飼育実態がどれほど認知されているのか、民間会社を利用して調査を行っています。豚・鶏・牛の飼育に関して10項目の質問を実施。2016年から2018年にかけては、認知度はわずかずつではありますが向上が見られましたが、2019年、2020年の調査結果は、有意差と言えるかは分かりませんが、認知度が少し低下しているという結果でした。
 詳細→ https://www.hopeforanimals.org/broiler/2020survey/

消費者教育としてのアニマルウェルフェア

▼消費者庁「倫理的消費」調査研究会 最終報告にアニマルウェルフェア▼
2015年度から消費者庁で始まった「倫理的消費」調査研究会の最終報告書に、2017年4月19日、動物への配慮が明記されました。
 詳細→ http://www.arcj.org/lifestyle/00/id=1061

▼「エシカル消費と動物への配慮を考えるシンポジウム」開催▼
2016年10月2日に開催されたシンポジウムでは、企業も含めた250名もの来場者が集まり、関心の高さが伺われました。
 詳細→ http://www.arcj.org/information/00/id=960

▼高校生向け消費者教育パンフレットにアニマルウェルフェア▼
東京法規出版「「つくろう! 消費者が主役の社会」全20ページ。監修は妊娠ストール廃止運動に賛同する日本女子大学の細川幸一教授です。ゴミの原料や省エネ、食品ロスの問題と並んで、アニマルウェルフェアも掲載されています。

知っていますか?「アニマルウェルフェア」
昔、食肉は大変高価でした。しかし、今は値段が下がり、安くておいしい肉が食べられるようになりました。低価格でたくさんの量を食べられる。食べ放題などもあります。しかしその食肉は牛や豚や鳥など動物の命をもらったものです。私たちはそうした動物たちのことも考えて日ごろから消費を行っているでしょうか?
実は、消費者が安い肉を大量に求めるあまり、家畜が劣悪な環境で、動物らしい行動を抑制されながら飼育されているという現実があります。そうした家畜の苦悩を最小限に抑えるための配慮をしようというのが、アニマル・ウェルフェア(動物福祉・家畜府福祉)の考え方です。家畜が快適な環境で健康に飼育されるための取り組みが中心ですが、日本ではあまり進んでいません。
消費するときはそうした背景も考え、大切に、適量を消費するよう心がけましょう

その他国内でのアニマルウェルフェア関連ニュース

▼2016年9月29日 第一回動物福祉研究会シンポジウム▼
動物福祉研究会第一回シンポジウムが行われました。傍聴してきましたが、第一回にもかかわらず5,60人の方が参加しており、関心の高さが伺われました。
当日のレジュメによると、「動物福祉研究会について:動物福祉研究会は動物福祉の学術研究会です。(中略)この研究会では、多様な専門分野の研究者が集い、多角的な情報共有と議論を行うことで、家畜福祉を総合的に理解し、学問分野として総合的に位置づけるとともに、関係者の有機的な組織化を行うことを目的としています。」
とのことです。
*この研究会の「動物福祉」は、畜産動物に限定されるものではありません。
 動物福祉研究会フェイスブックページ https://www.facebook.com/animal.welfare.science/

▼2016年11月23日 平飼い養鶏を行う組合が内閣総理大臣賞▼
採卵鶏飼養羽数約21万羽のうち、約5万6000羽を平飼いしている会田共同養鶏組合が内閣総理大臣賞を受賞。
今後については、 「鶏舎の建て替えや平飼い飼育の規模拡大、さらなる耕畜連携と飼料用米の利活用による水田事業の活性化、食料自給率の向上など、〝消費地に近い生産者〟の利点を生かした安全で高品質な鶏卵生産を目指している」としている。
http://www.keimei.ne.jp/article/20161105n1.html

▼2016年11月24日 NHKで「食で支える東京五輪」として動物福祉を放送▼

(NHKサイトより引用)
Q.そのための対応が必要だと言うことですね
たとえば農業については、農薬の使用回数を減らしたり、環境への影響を最小限にする散布方法を考えたもの。また化学肥料については、土壌診断を行って余分な化学肥料を使用しないで、栽培された農産物を選ぶべきだとか、様々な意見が出ています。
大変なのは畜産です。畜産の分野では動物にとっても快適な飼育環境の確保が求められているのです。
Q.動物にとって快適な飼育環境ですか?
例えばニワトリですが、日本では効率性を考えて狭いケージで飼われるのが一般的です。ところがニワトリは朝起きたら羽ばたきをし、毛繕いをし、砂浴びをするきれい好きの動物です。ゲージ飼いであればそうしたことはできません。
また豚はけんかをして、お互いが傷つかないように、生まれてすぐに歯を切断しますし、尻尾もすぐに切り落とします。こうしたことは、動物のためではありますが、一方で動物が意識ある存在であることを理解していないという見方もあります。
そしてたとえ短い一生であっても、動物の生態・欲求を妨げることのない環境で適正に扱うことを求めているのです。そうした取り組みが持続可能な社会をつくるという考え方です。

*国際オリンピック委員会IOCは近年、「スポーツ」「文化」に加え、「環境」をオリンピック精神の第三の柱とすることを宣言しています。大会運営を通じて、持続可能な社会を次世代に残すために畜産動物福祉の考えに基づいた原料調達が求められています

▼2018年2月 大手金融機関、アメリカへ 平飼い農場建設で融資▼
わが国の大手金融機関がアメリカの穀物メジャーと提携し、平飼い養鶏場に長期にわたり数百万羽規模の農場を建設することで合意(鶏の研究 2018年3月号より引用)